厳密な応用数学に意味はあるか…?

厳密な応用数学に意味はあるか…?

> 今ここに、ひと固まりの物質があるとしましょう。その物質の性質を、予言なり分析なりするのには、まず、モデルをたてます。物性理論では、「原理的には、このハミルトニアンから出発すれば、だいたいのことは正しく記述できるだろう」と思われているモデルがあるにはあるのですが、これは、絶対に厳密になんか解けません。(たとえば、これが可解でないという証明はないけど、もしも可解だったら、熱力学が成立しないことになるので、そんな事はあり得ない。)

> 厳密な理論では、モデルの簡単化の段階で、解けるようにするために、非常に(厳密さにこだわらない理論よりもずっと)粗い近似をして、極端なモデルに変えてしまい、その後、厳密な計算を遂行します。だから、いわば、最初の一回だけ有効桁数1桁の計算をし、その後は小数点以下無限次まで注意を払って計算しているようなもので、バランスが悪い。

> もちろん、「普遍性を信じれば、このモデルの結果は、広く当てはまるはず」という言い訳はできますが、現実の物質では、組成なり、作成条件なりをほんの少し変えるだけで物性が劇的に変化することは珍しくないので、劇的に簡単化されたモデルの結果が、モデルをほんの少し現実に近づけたとたんに変わってしまう(つまり、普遍性がない)ということは、充分あり得ます。だから、たいていの厳密な理論は、現実の自然界の記述としては、かなり荒っぽい近似だと言わざるをえません。普遍性が証明できない以上、厳密性にこだわっても仕方がないと思います。

厳密な理論はきらいです



逆に言うと

1:「普遍性」まで厳密に証明する(少なくとも、厳密に証明されることが期待される)
2:「だいたいのことは正しく記述できるだろう」と期待されるモデルを厳密に扱う(これは、主として「モデルの定式化」及び「そのモデルに関する定性的な研究」か…)

といった辺りであれば、厳密性に拘ることに意味がある。